黒川伊保子

男女のものの見方の違いを思うたびに、この世に、二つの違う脳があることの意味を思い知る。この組合せは、とても合理的だ。脳を遠距離両用のハイブリッドにすると、判断が遅れる。どっちかに集約しているからこそ、瞬時に危険を見分けられるのだ。遠くの危険と、近くの危険を瞬時に見抜く脳の組合せが夫婦というものなのだろう。 しかも、発情しあう男女は、免疫抗体の型が遠く離れて一致しない。男女は、体臭の一部で免疫抗体の型を知らせ合っており、その型が一致しないほうが、互いの好感度が高いからだ。 免疫抗体の型、すなわち外界に対しての生体としての反応がことごとく違う男女が、まったく違うものの見方で一緒に暮らす。夫婦の脳は、一対で精緻なメカのようなものであり、けっして離れてはいけない。恋とか愛とかを超えた、ともに生きる意義がそこにはある。